親から土地や山林を相続したものの、「自分では使う予定がない」「遠方なので管理できない」「売却できるのかわからない」と悩む方は少なくありません。
土地は相続しただけで終わりではありません。所有者になれば、登記や管理について考える必要があり、森林については一般の宅地とは別に届出が必要になる場合もあります。
一方で、相続した土地を必ず売却しなければならないわけでもありません。
この記事では、土地・山林を相続したときに最初に確認したいことから、管理・売却・国庫帰属まで、選択肢を順番に整理します。
土地・山林を相続したら、まず確認すること
土地や山林を相続したときは、いきなり売却や処分を考えるのではなく、まず「どのような土地なのか」を確認しましょう。
相続・実家整理全体の流れを確認したい方は、相続・実家整理の総合ガイドもご覧ください。
最低限、次の項目を確認します。
- 土地の所在地
- 地目
- 面積
- 現在の利用状況
- 登記名義
- 境界の状況
- 接道状況
- 固定資産税
- 森林に該当するか
- 他人が利用する権利が設定されていないか
特に山林の場合、住所だけでは現地の状況がわからないことがあります。
登記簿上は山林でも、実際には道路から遠く離れていたり、境界がわかりにくかったり、長期間管理されていないケースもあります。
まずは法務局の登記事項証明書や公図、自治体から届く固定資産税の資料などを確認しましょう。
相続登記は後回しにしない
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。
相続によって不動産を取得したことを知った日から、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。
「売る予定がないから登記しなくてもいい」というわけではありません。
土地を将来売却したり、国庫帰属制度を利用したりする場合にも、所有関係を整理しておくことが重要です。
相続登記の具体的な手続きについては、相続登記のやり方・期限・必要書類も確認しておきましょう。
山林を相続した場合は90日以内の届出にも注意
山林を相続した場合、相続登記とは別に確認したい制度があります。
地域森林計画の対象となっている民有林については、森林の土地の所有者となった日から90日以内に、市町村へ「森林の土地の所有者届出」を行う必要があります。
これは相続登記の「3年以内」とは別の制度です。
そのため、
「相続登記は3年以内だから、山林の手続きも3年以内でいい」
とは考えないようにしましょう。
自分が相続した土地が届出の対象になるかどうかは、土地が所在する市町村の林務担当窓口などで確認してください。
相続した土地・山林はどうする?主な4つの選択肢
相続した土地や山林の扱いは、大きく次の4つに分けて考えられます。
実家や空き家も一緒に相続した場合は、空き家放置の税金リスクと特定空家対策も参考にしてください。
| 選択肢 | 向いているケース | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 自分で所有・管理する | 利用予定がある、管理できる | 維持管理の負担が続く |
| 売却する | 利用予定がなく売却可能性がある | 買い手や価格、境界などの確認が必要 |
| 他の利用方法を検討する | 賃貸・事業利用などの可能性がある | 土地の規制や地域条件の確認が必要 |
| 国庫帰属を検討する | 相続した土地を手放したい | 要件審査・審査手数料・負担金がある |
「手放したいからすぐ国に返す」という単純な制度ではありません。
土地の状態や境界、権利関係などによって利用できる制度が変わるため、まず土地そのものを確認することが大切です。
自分で土地・山林を管理する場合
土地を所有し続ける場合は、利用していなくても管理について考える必要があります。
たとえば山林では、
- 倒木
- 道路や進入路の状態
- 境界
- 不法投棄
- 雑草や樹木の繁茂
- 災害時の安全性
などを確認する必要があります。
遠方に住んでいて自分で確認できない場合は、現地の状況を把握できる人や専門業者などに相談する方法もあります。
特に「何年も現地を見ていない」という状態は避けたいところです。
相続した土地・山林を売却する場合
売却を考えるなら、最初に「本当に買い手がつく土地なのか」を確認しましょう。
宅地のように、土地なら何でも同じように売れるわけではありません。
山林の場合は、
- 道路から土地まで入れるか
- 車両が進入できるか
- 境界が確認できるか
- 面積はどの程度か
- 周辺に利用需要があるか
- 保安林などの指定がないか
- 土地に設定された権利がないか
などが売却可能性に影響します。
「山林だから価値がない」とも、「土地だから必ず高く売れる」とも限りません。
まずは土地の所在地と資料を整理したうえで、不動産会社などに相談してみましょう。
相続した土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」
相続した土地を自分で利用する予定がなく、売却も難しい場合には、相続土地国庫帰属制度を検討できる場合があります。
この制度は、相続や遺贈によって取得した土地について、一定の要件を満たした場合に、法務大臣の承認を受けて国庫に帰属させる制度です。
ただし、申請すれば必ず国が引き取ってくれるわけではありません。
たとえば、次のような土地は対象外となる場合があります。
- 建物が存在する土地
- 担保権などが設定されている土地
- 他人が使用する権利が設定されている土地
- 土壌汚染や埋設物がある土地
- 境界が明らかでない土地
- 管理や処分に過大な費用・労力が必要となる土地
また、承認された場合には、審査手数料のほか、土地の管理に必要となる一定期間分の負担金を納める必要があります。
そのため、「不要な土地を無料で国に返す制度」と考えるのは適切ではありません。
山林でも国庫帰属制度を利用できる場合がある
山林だから国庫帰属の対象外というわけではありません。
実際に、林野庁では山林についても相続土地国庫帰属制度の申請・審査が行われていることを公表しています。
ただし、土地の境界や管理状態など、個別の要件確認が必要です。
山林を手放したい場合は、法務局に相談して、自分の土地が制度の対象になり得るか確認しましょう。
土地・山林を共有で相続した場合は早めに話し合う
兄弟姉妹など複数人で土地を相続する場合は、共有状態を長期間放置しないことも大切です。
共有者が増えたり、次の相続が発生したりすると、土地の管理や売却について話し合う相手が増えていく可能性があります。
たとえば、
「自分は売りたいが、兄は所有したい」
「遠方に住んでいるので誰も管理したくない」
といった問題が起きることもあります。
土地をどうするかについては、相続人同士で早めに方向性を話し合っておきましょう。
土地・山林を相続したときの進め方
迷った場合は、次の順番で整理すると考えやすくなります。
1.土地の資料を確認する
登記事項証明書、公図、固定資産税の資料などを確認します。
2.土地の種類を確認する
宅地なのか山林なのか、森林法上の届出対象となる森林なのかなどを確認します。
3.相続登記を進める
不動産を取得したことを知った日から原則3年以内という期限を意識します。
4.山林なら所有者届出を確認する
森林の土地の場合は、90日以内の所有者届出が必要になる場合があります。
5.利用・管理・売却の可能性を比較する
「使う」「持ち続ける」「売る」「手放す」という選択肢を比較します。
6.国庫帰属制度を確認する
売却や利用が難しく、土地を手放したい場合は、相続土地国庫帰属制度の対象になるか確認します。
土地・山林を相続したら、すぐ売却を決めなくてもいい
相続した土地について「使わないから早く処分しなければ」と焦る必要はありません。
まず、
土地の状態を確認する
→ 権利関係を整理する
→ 管理負担を把握する
→ 売却・利用・国庫帰属を比較する
という順番で考えましょう。
特に山林は、一般的な住宅地とは異なる制度や管理上の問題があります。
自分だけで判断するのが難しい場合は、司法書士、土地家屋調査士、不動産会社、自治体の林務担当窓口など、問題に応じた専門家・窓口へ相談することをおすすめします。
よくある質問
山林を相続したら必ず売らなければいけませんか?
いいえ。
相続した山林を自分で所有・管理することもできますし、条件によっては売却や相続土地国庫帰属制度などを検討できます。
ただし、所有する以上は管理や税負担などについて確認しておく必要があります。
山林を相続したら相続登記だけすればいいですか?
必ずしもそれだけではありません。
森林法上の地域森林計画対象森林に該当する場合は、森林の土地の所有者届出が必要になることがあります。
相続登記の期限とは別に、90日以内という届出期限があるため注意しましょう。
相続した山林は国に返せますか?
相続土地国庫帰属制度の対象となる可能性はあります。
ただし、一定の要件があり、審査を受ける必要があります。
また、審査手数料や承認後の負担金も必要です。
「山林だから国が引き取ってくれる」という制度ではないため、法務局で個別に確認しましょう。
土地の境界がわからなくても売却できますか?
土地の状況によって異なります。
境界が不明確な土地は、売却時に問題になる可能性があります。
売却を検討する場合は、登記資料や公図などを確認し、必要に応じて土地家屋調査士などへ相談しましょう。
まとめ
土地や山林を相続した場合は、「使わないから処分する」とすぐに決めるのではなく、まず土地の種類・所在地・境界・権利関係・管理状態を確認しましょう。
特に山林では、相続登記とは別に森林の土地の所有者届出が必要になる場合があります。
そのうえで、
- 自分で所有・管理する
- 売却する
- 別の利用方法を検討する
- 相続土地国庫帰属制度を利用できるか確認する
という選択肢を比較します。
土地は一度相続すると、放置しても問題がなくなるわけではありません。
「管理できない土地をどうするか」を早めに整理しておくことが、将来の負担を減らすことにつながります。
この記事について
執筆・構成:どっぽ編集部
最終更新日:2026年9月

