遺品整理が終わっても、それで実家の問題がすべて片付くわけではありません。むしろ、そこからが本当の悩みの始まりだった、という方も少なくないはずです。
「このまま空き家として残しておいていいのか」「売るべきなのか」「誰も住む予定がないのに、どうすればいいのか」——遺品整理を終えたあとに必ずといっていいほど直面するのが、実家そのもの、つまり不動産をどうするかという問題です。
この記事では、実家の片付けが一段落したあとに考えるべき選択肢と、放置することのリスク、そして家族で話し合う際に押さえておきたいポイントを解説します。
実家をどうするか、4つの選択肢
実家の今後は、大きく分けて次の4つに整理できます。
- 住む:自分や家族が実際に住み替える
- 貸す:賃貸物件として活用する
- 売る:不動産として売却する
- 解体する:更地にして、土地として活用・売却する
どれが正解ということはなく、立地、建物の状態、家族の意向、資金面によって最適な選択は変わります。ただし、はっきり言えることが一つあります。
それは、「決めずに放置する」という5つ目の選択肢は、実質的に最も損をする選択肢になりやすいということです。
「空き家のまま放置する」ことのリスク
固定資産税が最大6倍になる可能性がある
2023年の法改正により、「管理不全空家等」という区分が新設されました。適切に管理されていない空き家が自治体から勧告を受けると、固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)の対象から外れ、土地の固定資産税が最大6倍になる可能性があります。
もともと、住宅が建っている土地には固定資産税を最大6分の1に軽減する特例があります。これが「空き家でも建物を残しておいた方が税金が安い」と言われてきた理由です。しかし、この特例は管理が行き届いていることが前提であり、放置すればするほど、逆にこの優遇を失うリスクが高まる仕組みに変わってきています。
「特定空き家」に指定されると、行政代執行のリスクも
倒壊のおそれがある、衛生上有害である、景観を著しく損なっているなど、一定の状態にあると判断された空き家は「特定空き家」に指定されます。指定後も改善が見られない場合、最終的には**行政代執行(自治体による強制解体)**の対象となり、解体費用を所有者に請求されるケースもあります。
「まだ大丈夫だろう」と先延ばしにしているうちに、この段階まで進んでしまうケースは珍しくありません。
管理の手間と防犯面のリスク
税金の問題だけでなく、誰も住んでいない家は、庭木の繁茂、雨漏り、害虫の発生、不審者の侵入など、物理的なリスクも年々大きくなっていきます。
近隣とのトラブルに発展することもあり、これも「後回しにするほど負担が増える」典型的な問題です。
相続登記の義務化との関係
以前の記事でも触れましたが、2024年4月から相続登記が義務化されており、不動産を相続した場合は、相続を知った日から3年以内に登記を行う必要があります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
「名義変更を後回しにしたまま、実家をどうするかも決めていない」という状態は、法的なリスクと空き家としてのリスクの両方を同時に抱えていることになります。実家の今後を検討するタイミングで、相続登記も一緒に済ませてしまうのが効率的です。
「売る」を選ぶ場合の大まかな流れ
売却を選ぶ場合、大まかには次のような流れになります。
- 不動産会社に査定を依頼する(複数社に依頼して比較するのがおすすめです)
- 仲介か買取かを選ぶ:仲介は時間がかかりますが高値での売却を狙えます。買取は価格が下がる代わりに、短期間で確実に現金化できます
- 売買契約・引き渡し
「空き家の3,000万円特別控除」を忘れずに
相続した実家(親が一人暮らしをしていた、昭和56年5月31日以前に建築された家屋など、一定の要件を満たすもの)を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。
この特例の適用期限は2027年(令和9年)12月31日までの譲渡が対象です。
なお、2024年1月以降の譲渡からは、相続人が3人以上いる場合、控除額が1人あたり2,000万円に引き下げられている点には注意が必要です。要件は細かく決まっているため、対象になるかどうかは税理士に確認することをおすすめします。
「実家じまい」を家族で話し合うときに揉めやすいポイント
実家の今後は、遺品整理以上に家族間の意見が割れやすいテーマです。よく揉める原因を知っておくだけでも、話し合いが多少はスムーズになります。
- **「思い出があるから残したい」対「維持費や管理の手間を考えると手放したい」**という感情と実利の対立
- 誰が管理・維持の負担を負うのかが曖昧なまま話が進んでしまう
- 将来住む可能性がある人と、全く住む予定がない人の間で、優先すべきことが違う
- 遺品整理のときと同様に、遠方に住んでいる家族と、近くにいて実務を担う家族との温度差
正解を急いで決める必要はありませんが、「いつまでに方向性を決めるか」という期限だけは、家族で共有しておくことをおすすめします。期限がないまま話し合いを先延ばしにすることが、結果的に一番実家を長く放置することにつながります。
まとめ
遺品整理が終わっても、実家という不動産の問題は残り続けます。大切なのは、次の3点です。
- 空き家のまま放置することには、税金・行政指導・管理の手間という、はっきりとしたリスクがある
- 相続登記の義務化(3年以内)と合わせて、実家の今後も同じタイミングで検討する
- 売却を選ぶ場合は、期限のある特例(3,000万円特別控除、2027年12月31日まで)を見逃さない
「決めない」という選択が、実は一番コストの高い選択になっていることがあります。すべてを一度に決める必要はありませんが、まずは家族で「いつまでに方向性を決めるか」を話し合うところから始めてみてください。
あわせて、親を亡くした直後にやるべき手続き一覧や、遺品整理を親族が協力してくれないときの進め方もご覧ください。
