終活の記事を読むと、たいてい「元気なうちに」「早めに話し合っておきましょう」と書いてあります。
それができるなら、苦労はしません。
私自身、父の看病に追われる毎日の中で、終活の「しゅ」の字も口にする余裕がないまま、父を見送ることになりました。この記事では、その経験と、今も抱えている後悔をお話しします。「準備しておけばよかった」と後悔している方、今まさに準備どころではない状況にいる方に、少しでも寄り添えたらと思っています。
私たちに起きたこと
父は、肺がんのステージ4と診断されました。
そこから始まったのは、抗がん剤治療のための通院と、それ以外の治療のための通院を、ほぼ毎日のように送迎する日々でした。仕事をしながら、あるいは他の家族のことも気にかけながら、病院への往復を繰り返す。そんな生活の中で、「終活について話し合う時間」など、どこにも見つかりませんでした。
一定期間、病状は安定していました。このまま落ち着いてくれるのではないか、そう思える時期もありました。
しかし、抗がん剤が効かなくなってきた頃から、状況は一変しました。食欲がなくなり、食事が喉を通らなくなり、体力が一気に落ちていきました。入院してからは、ほぼ点滴だけで栄養を取っている状態でした。面会に行くたびに、別人のように痩せ細っていく父の姿を見るのが、何よりつらいことでした。
その頃、担当の医師から、治療を断念して緩和ケア施設に移ることを、遠回しに打診されました。しかし父はそれを拒みました。医師からは、新しい抗がん剤を試すにしても、効果と副作用の負担を比べると割に合わない、とも忠告されました。それでも父は、最後まで自分が死に向かっているとは考えず、治療を続ければ必ず治ると信じて、治療の継続を望みました。
気づけば、心の準備をする時間も、終活や生前整理について話し合う時間も、何一つ持てないまま、父の死に向き合うことになっていました。母とも、父とも、そうした話を交わすことはできませんでした。
今も消えない後悔
もしあのとき、抗がん剤治療を早めに切り上げて、緩和ケア施設に移っていたら。たとえ数日、数か月の延命であったとしても、もっと穏やかな時間を過ごせたのではないか。今もそう考えることがあります。
そして何より悔やんでいるのは、父や母が若く元気だった頃から、少しずつでも終活のこと、病気になったときのこと、医師や看護師とのかかわり方について、知識を増やしておかなかったことです。すべてが後手後手でした。何もせず、ただ日々をなんとなく過ごしてきた自分を、責めたくなります。
もちろん、当時の判断がすべて自分一人の無知のせいだった、とは言い切れないとも分かっています。父自身が最後まで治療を望んだこと、医師も可能性を完全には否定しなかったこと、そこには私だけでは動かせない事情がいくつも重なっていました。それでも、「もっと早くから備えていれば、違う選択肢を持てたかもしれない」という思いは、今も消えません。
この後悔があるからこそ、このサイトを訪れてくださった方には、私と同じ過ち、同じ後悔を、できることならしてほしくないと思っています。
「準備できなかった自分」を、責めすぎなくていい
終活関連の情報の多くは、「元気なうちに準備しておくこと」を前提にしています。
しかし実際には、
- 診断から病状の進行までが早く、話し合う時間そのものがなかった
- 治療や看病で手一杯で、終活どころではなかった
- 「今、こんな話をしたら、本人を不安にさせるのではないか」とためらっているうちに、時間が過ぎてしまった
というケースは、決して珍しいことではありません。
私自身、今もこの後悔と完全に折り合いをつけられたわけではありません。それでも、当時の自分にできることには限りがあったのだと、少しずつ受け入れようとしています。
もし今、「もっと早く準備しておけばよかった」と自分を責めているなら、その気持ちは痛いほど分かります。そのうえで、それだけがすべての原因ではなかったはずだ、ということも、心のどこかに置いておいてほしいと思います。
周囲との関係で消耗しないために
看病や見送りの時期は、体力的にも精神的にも、余裕がなくなります。
そんな中で、家族や親族との関係にまで気を配る余裕がなくなってしまうこともあります。葬儀や今後の費用のことで、疑心暗鬼になったり、気まずい空気が生まれたりすることも、残念ながら珍しくありません。
そういう状況に置かれたとき、無理に丸く収めようとする必要はありません。今は、自分と、そばにいる大切な人を守ることを優先していい時期です。関係の修復や整理は、落ち着いてから、少しずつで構いません。
今からでもできること
私自身、何の準備もないまま父を見送ったあと、何から手をつければいいのか分からず、ただ立ち尽くすような状態でした。だからこそ、最低限これだけは知っておいてほしい、ということをまとめておきます。あなたが今どちらの状況にいるかによって、次に読んでいただきたい記事は変わります。
まだ、親が元気なうちの方へ
もし今、まだ間に合う状況にあるなら、少しずつでも準備を始めることをおすすめします。私自身ができなかったからこそ、今できることの大切さを伝えたいと思っています。
実家の片付けは、亡くなってからでもできますが、元気なうちに進めることで、本人の意思を反映でき、家族の負担も軽くすることができます。無理のないペースで進める手順を、こちらにまとめています。
実家片付けロードマップ|親が元気なうちにやるべき手順とスケジュール実家の片付けを親が元気なうちに進めるための手順を、物・心・情報の3つの軸で整理。1回目から始められるモデルスケジュール、「まだいい」と言われたときの対応、次に帰省したときにまずやることまで解説します。
エンディングノートも、全項目を埋えようとする必要はありません。挫折しないための最小限の項目だけをまとめた記事も、参考にしてください。
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すでに、身近な人を見送った方へ
もし今、身近な人を亡くしたばかりで、何をいつまでにすればいいのか分からないのであれば、まずは親が亡くなった後に必要になる手続きと期限を整理した記事から確認してみてください。
親を亡くした直後にやるべき手続き一覧|14日・3か月・10か月の期限で解説親を亡くした直後にやるべき手続きを、7日・14日・3か月・10か月の期限別に整理。相続放棄や相続税申告など見落としやすい期限も、実体験を交えてわかりやすく解説します。
遺品整理も、亡くなった直後に無理をして始める必要はありません。遺品整理を始めるタイミングについても、焦らず判断するための目安をまとめています。
遺品整理の完全ガイド|費用相場・業者の選び方・進め方を徹底解説遺品整理の費用相場、業者の選び方、進めるタイミング、買取と処分の考え方を、はじめての方向けに解説。作業前に確認したいものや、見積もりで確認したい点までまとめた完全ガイドです。
また、親が暮らしていた実家については、「すぐに売る」「すぐに片付ける」と決める必要はありません。住む・売る・貸す・解体するなど、実家を相続した後の選択肢を整理してから考えていく方法もあります。
実家の片付けと空き家・不動産の処分|遺品整理の後に必ず来る悩みへの向き合い方遺品整理の後に残る実家をどうするか。住む・売る・貸す・解体するの4つの選択肢と、空き家を放置するリスク、相続登記の義務化、3,000万円特別控除、家族で揉めやすい点を整理しました。
まとめ
終活は、元気なうちに準備できるのが理想です。しかし、それができないまま大切な人を見送ることになる方も、決して少なくありません。
私は、後手後手になってしまった自分を、今も完全には許せていません。それでも、この後悔を誰かの役に立てることができるなら、それが今の私にできる、せめてものことだと思っています。
準備がなかったことを悔やむより、今、目の前にあることを一つずつ片付けていくことの方が、今のあなたには必要かもしれません。すべてを一度に終わらせようとしなくて大丈夫です。焦らず、あなたのペースで進めてください。
この記事を書いている私について
私自身が父を亡くしたあと、手続きや相続、遺品整理に向き合う中で「もっと早く知っておけばよかった」と感じたことを、このサイトにまとめています。詳しいプロフィールはこちらでご覧いただけます。






